ご自分で後見開始申立て行う場合を例とした手続きの流れ

手続きを進める前に

ご自分で後見開始申立て行う場合を例とした手続きの流れ-東京家庭裁判所での申立を例として。
ここではわかりすい説明とするため、実の息子である長男(以下、「申立人」といいます。)の方が支援の必要になった母親(以下、「本人」といいます。)のために自分を後見人候補者として成年後見申立て手続きをするという前提で申立ての流れ説明をさせて頂きます。むずかしい言葉は用語集を参照してください。実費として必要となる費用は赤字で記載してあります。

援助が必要な人をご本人、申し立て人・後継人候補を長男とした場合

Step1 必要書類を集め作成します

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申立てをする裁判所の管轄は、本人の住民票のある場所の家庭裁判所です。
各家庭裁判所で使用する書類などのフォームが違うので一式をインターネット上からダウンロードするか返送用の封筒を同封した郵便を利用して返送してもらうのが良いでしょう。今回は管轄が東京家庭裁判所(以下、「家庭裁判所」といいます。)でしたので「東京家庭裁判所後見サイト」から書類一式をダウンロードしました。
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医師に診断書の作成を依頼します。
Step1-1で取り寄せた書類の中に申立時に家庭裁判所に提出する診断書と診断書付票(診断書付票のサンプル)があります。診断書の作成をお願いする医師は本来であればメンタルヘルスや認知症などの専門医に作成してもらうのが望ましいですが、日ごろからの状況をよく把握している、本人の主治医やかかりつけの医師に診断書を作成頂くのが通常です。診断書作成費用はおおむね3千円から1万円程度です。
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市(区)役所などで住民票などを取得します。
  • 本人の世帯全員の住民票(本籍・続柄記載のもの)1通 200円~400円(市町村により異なります)
  • 本人の戸籍謄本 1通 450円
  • 本人の登記されていない証明書(登記されていない証明書のサンプル)(東京法務局で取得します)
  • 後見人候補者の世帯全員の住民票(本籍・続柄記載のもの)1通 200円~400円
  • 後見人候補者の戸籍謄本 1通 450円
尚、本人と後見人候補者が同一戸籍、同一世帯の場合には住民票並びに戸籍謄本の取得は1通で足ります。本人の戸籍謄本や住民票を取得する際には、申立人の戸籍謄本を持って行ったほうがいいでしょう。戸籍謄本を見れば申立人が子供という証明ができ、さらに後見申立てに使用するという説明が必要となるでしょう。登記されていない証明書を取得するには本人と申立人の関係を証明するために本人と申立人の戸籍謄本が必要となります。 なお、診断書や戸籍謄本などの公的資料は発行日から申立日を基準にして3か月以内である必要があります。
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親族に同意書を書いてもらいます。
申立人は3人兄弟で弟と妹がいます。事前にこの手続きをすることは話していましたので、弟と妹からすぐに同意書(同意書のサンプル)をもらうことができました。
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家庭裁判所から取り寄せた各書類を作成します。
などの記入をします。各書類を取り寄せした際に記載例がありましたのでそれを参考にして書類を作成しました。
本人の学歴などわからない場合はご親戚などに聞いてみて、それでもわからない場合はわかる範囲での記載となるでしょう。
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添付する書類を集めたりコピーしたりします。
現時点で可能な限りの本人の財産や収入、負債、支出が裏付けできる資料を集めます。具体的には
  • 預金通帳や証書
  • 株式の取引残高証明書
  • 生命保険証書
  • 年金振込通知書
  • 施設や病院の領収書、医療費の明細
  • 住宅ローン残高証明書
  • 固定資産税納税通知書
  • 介護保険料納付書
  • 地代や家賃の明細
  • 不動産登記事項証明書原本
等です。(1)乃至(9)はコピーを提出します。サイズは原則A4で収まらない場合にはA3を使用すると良いでしょう。

Step2 申立の準備をします

1
書類が整ったら家庭裁判所に電話をして申立日の予約をします。
申立ての日程を予約します。電話で家庭裁判所の担当の方から
  • 管轄の確認
  • 診断書の内容
  • 申立人と本人の関係
  • 後見人候補者の確認
  • 日程の調整
などの確認がされます。
また、予約の日に本人と一緒に家庭裁判所まで来ることができるか尋ねられましたが、入院中で容易ではない旨を伝えたところ、「当日は申立人のみで良いですよ」と言われました。最後に申立人の連絡先を伝え、予約番号を教えてもらいました。また完成した書類を予約の日の3日前(土日祭日を除きます。)までに郵送すると事前に不備がないか確認してもらえ、不備などがある場合には連絡してくれるようですので、すぐに出来上がった全ての書類を家庭裁判所に郵送することにしました。尚、提出する書類は返してもらえないので予め全ての書類をコピーしてご自分の控えとするのが良いでしょう。
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予約の当日に家庭裁判所にいきます。
予約の電話では当日に印鑑を持参するように言われていましたので忘れずに持ち、念のため事前に家庭裁判所に郵送した書類のコピーも持参することにしました。
予約の時間の15分位前に家庭裁判所つきましたので担当者の方に予約番号を伝えるとまず、印紙や切手を購入するようにいわれました。内訳明細の紙をもらい売店で
  • 収入印紙 3,400円
  • 郵便切手 3,200円
分を購入しました。
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家庭裁判所の調査官(参与員)の方と面接をします。
今回は本人が容易に裁判所に来ることできず、申立人と後見人候補者が同一人物ですので一人での面談となりました。調査官(参与員)の方からは40分程度
  • 申立てに至る経緯
  • 本人の生活状況
  • 本人の判断能力や財産についての状況
  • 添付した本人の預金通帳の大きな金額の移動の理由
  • 親族のかたの意向
  • 後見人候補者の経歴・生活や経済の状況、家族関係
  • 本人の今後の医療、介護の方針
などを尋ねられました。提出した書類に不備などがある場合には、この時に追加で提出する書類の指示などがあります。今回は書類に不備がなかったようですので、これで申立てが完了しました。

Step3 裁判所で審理がされます

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個々の案件により下記のような手続きが行われます。
  • 本人調査
    申立ての内容などについて直接、本人から意見を聞く作業です。本人が直接、家庭裁判所に来ることが難しい場合には、裁判所の担当者が訪問することになるでしょう。尚、補助開始と保佐開始の申立てで代理権を付与する場合には、必ず本人の同意が必要となるので、本人調査の時に同意の確認も行います。
  • 親族への意向照会
    家庭裁判所の判断の参考とするため、本人の親族に対して、書面などにより、申立ての内容を伝え、親族としての意向を照会する場合があります。
  • 鑑定
    本人の判断能力を医学的に判定するための手続きです。鑑定が行われる場合、別途、鑑定費用が発生します。Step1-2で診断書を作成してくれた医師が鑑定を引き受けてくれる場合には、診断書付票に鑑定料の目安を記載してくれているでしょう。一般的には鑑定料は、5万円から10万円程度です。
以上(1)乃至(3)の手続きは案件によっては省略される場合があります。

Step4 審判がされ確定の後、登記がされます

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審理や調査の終了後、家庭裁判所は、結果を総合考慮し、要件を満たしていれば後見等の開始の審判をし、あわせて最も適任であると考える人を後見人等に選任します。後見人を複数選任したり後見監督人を選任したりすることもあり、後見制度支援信託の利用が検討される場合もあります。
保佐開始や補助開始の場合には、あわせて必要な同意見や代理権も定められます。
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家庭裁判所から審判書謄本が本人並びに申立人と成年後見人等に選任された人に郵送されます。審判書謄本が成年後見人なに届いてから二週間以内に利害関係人などから不服申立て(即時抗告)がされない場合、後見開始の審判が確定します。なお、成年後見人等の人選についての、不服の申立てはすることはできません。
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審判の確定後、家庭裁判所から東京法務局に審判内容の登記が依頼されます。登記手続は2週間程度かかります。登記が完了すると家庭裁判所から成年後見人等に登記番号の通知がされます。

Step5 後見人の最初の仕事

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本人の資産の把握をします。
申立ての資料を集めている段階では、いくら本人の親族とはいえ、金融機関や保険会社は本人の資産を開示してくれない場合が多いでしょう。Step4-3で後見の登記が完了し後見登記事項証明書(登記事項証明書のサンプル)(以下、「証明書」といいます。)を取得すれば、申立人が、本人の成年後見人として選任されたという証明ができます。この証明書を持参して金融機関などに後見人として資産の照会をし、あらためて本人の資産を確定して家庭裁判所に報告します。
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収支予定をたてます。
Step5-1の作業で本人の財産、収入、負債の把握ができたら医療費や施設費、税金などの決まった支出を計上し、年間の予定をたてます。
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財産目録、年間収支予定表を家庭裁判所に提出します。
上記、Step5-1 で再度、財産目録を作成し、 Step5-2 で年間収支予定表ができたら家庭裁判所に提出します。家庭裁判所からは具体的にいつまでに提出してくださいという指示があります。概ね選任された日から二か月後位が標準のようです。

おわりに

財産目録と年間収支予定表の提出が完了しますと「急迫の必要のある行為のみしかできない」とする民法第854条(財産目録作成前の権原)の制限もなくなり、はれて成年後見人としての仕事をしていくことになるでしょう。ただ、実際にはここから一か月ほどは金融機関への届け出や年金事務所、役所への手続きなどでかなり忙しい日々になると思います。

以上、駆け足で至って簡単な例ですが、後見申立て手続きの流れを説明させて頂きました。よく「期間はどの程度かかるのでしょうか?」という質問を頂きます。その時点の家庭裁判所の混雑具合や鑑定作業の有無などで、一概には言えませんが一定の条件を満たした案件で書類を不備なく揃えて申立てができれば、最短で登記完了までで1月半位程度です。 期間に一番影響があるのが鑑定です。鑑定を必要とする場合には、作業だけで平均3週間程度は必要となります。従いまして期間に関しては、ご相談の段階では、明確にアドバイスすることはできませんが、診断書を取得頂き、拝見させて頂ければ、ある程度の目安はご案内することができると思います。まずは、かかりつけの医師に診断書の作成をお願いしてみるのがいいでしょう。
費用についても一番大きなものとなるのは医師の鑑定料となるため、鑑定の有無に大きく左右されることになります。 尚、申立時の印紙代などや鑑定費用の手続き費用は申立ての段階で本人の負担とする希望をして、これが認められた場合には選任された後見人に対して、本人の財産の中から支払を求めることができます。

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